2012年12月22日

沈黙のサニーちゃん その3

とにもかくにも(姉の)家には無事にたどり着いて一晩泊めてもらった。
翌朝、サニーちゃんはいつもと変わらず私たちを
横浜から富士宮の私たちの家までやはり文句ひとつ言わずに送ってくれた。
そして私たちはまた平穏な百姓生活に戻った。
いつもと違うのは、ツグがなにやらインターネットであれこれ注文を始めたこと。

うちには車は3台あって、1台はサニーちゃん、
もう1台は軽トラック、あと1台はトラクターである。
トラクターでも車道を走れないことはないのだが
ゆっくりトコトコとしか走らないので普通に乗り回すということはまずない。
軽トラはおもにツグが乗っていて、サニーちゃんは普段はミィが乗っている。
ツグがミィに黙ってサニーちゃんに乗って行ってしまうということはほとんどない。

ところがある日、サニーちゃんに乗ろうとしたら、なんだか違うのである。
なんだか違う。

夕食時に「今日、サニーちゃんどうかした?」とツグに聞いてみたら
ツグはパッと顔を輝かせて「わかる?!」と嬉しそうに答えた。
「止め方がいつもと違った」と返事をしたら
ツグはモジモジしながら「違うのはそれだけ?」と聞くので
「鍵の置き場所もいつもと違った」とさらに返事をしたら
「そうじゃなくて、エアコン直ってたはずなんだけど…」とたまりかねたように言う。
「エアコン。使ってないからわからない」と返事をしたら
「今日、エアコン直したんだよ。多分、明日から使えるよ」と
ツグは残念そうに頭をふりふり言って箸を置いた。
――なんだか悪いことをしたみたいだ。

次の日、「そうだ!エアコン試してみよう」と思ってスイッチに手を伸ばしかけたが
「今日はそんなに寒くないし、ガソリン食いそうだからやめとこう」と思ってやめた。
夕食時にツグにそう報告したら
「温風は車の中の熱を回してるだけだからそんなにガソリン食わないよ。
扇風機と同じくらいしかエネルギー使わないよ」と言って
やっぱり残念そうに頭をふった。
――なんだか悪いことをしたみたいだ。

そのまた翌日になってようやくエアコンを試してみたら
バッチリ温かい空気が出てきて心の中で「ありがとう」と手を合わせた。
  


Posted by たびんちゅ at 21:59Comments(0)

2012年12月16日

沈黙のサニーちゃん その2

そんな訳でサニーちゃんをくるまのお医者様に見せに行こう、と言っていた矢先、
なんとくるまのお医者様はあちらからやってきてくれた。
先日、横浜に行った際に紹介を受けたミィの姉の彼氏殿が
偶然にもくるまのお医者様だったのだ。

その晩は彼らの家に泊めてもらう約束だったので
サニーちゃんに乗ってみてもらうことにする。
期待のこもったまなざしで見つめるツグミのふたり…。

お医者様:あー。多分、サーモスタットが壊れてるんだよ。
     こんなに走っていて水温が上がってこないのはおかしいよね。
     水温が上がらないから、温かい空気が出てこないんだよ。

と、早速にもその名医っぷりを見せてくださる。

ツグ  :じゃあ、そのサーモスタットを変えれば良いわけですね。
お医者様:多分ね。

くるまのお医者様の受診料はほんとうに安くないので自分でできるならありがたい。
「よかったね」と顔を見合わせるツグミのふたりにさらに覆いかぶさる名医の言葉。

お医者様:ところでサイドブレーキのランプが消えないのだけれど…。

サイドブレーキを落としてもランプが消えなくなってから、もうかれこれ1年近く経つ。
すっかり慣れっこになっているふたりが同時に明るく

ツグミ :あ、それは気にしないで下さ~い♪

と答えると、

お医者様:いや、気にした方がいいと思うけど…。
     多分、ブレーキパッドがすり減ってるんだよ。
     それに…。

アレとコレとソレと、とひっきりなしに続く名医の診断。

ミィ  :走って5分も経たないうちにそんなにいろいろ見つかるんじゃあ、
     家に着くころには「廃車にしろ」って言われかねないわね…。

…どうなる、サニーちゃん!?
  


Posted by たびんちゅ at 22:50Comments(2)

2012年12月08日

沈黙のサニーちゃん

野良仕事に配達にと本当に働いてくれる私たちの愛車はサニーちゃん、という。

サニーちゃんが来る前に私たちをあちらこちらへ連れて行ってくれた
先代の車体ナンバーが31で、そちらの愛称がサイチだったので
「2代目だからサニーだね」といってサニーちゃんの名前はアッサリ決まった。

可愛らしい名前のわりに車体はシルバー、
見たところありふれたワンボックスカーであるが、
日々これだけハードに乗っているとさすがに愛着が湧いてくる。
いつも黙々と仕事をしてくれる、私たちにとっては大事なスタッフである。

ある日、冬も深まってきたので暖房を入れようとしたが
いつまでたってもヌルイ風が出てくるばかりでまったく温まらない。
とにかく車は走ってくれることが大切なので
温めてくれないことはまあよし、ということにはなったが
サニーちゃんはどうやら不調らしい。

「どうした、サニーちゃん?」と問いかけても、
サニーちゃんは今日も沈黙を守り続けている。

黙々と働いてくれるのはありがたいが
黙々と壊れていくのはちぃと困る。


  


Posted by たびんちゅ at 08:03Comments(0)

2012年12月02日

冬の爪先はナイーブでござる

その防寒ブーツはいきつけの居酒屋、いやいや(笑)
いきつけのホームセンターで980円で売られていた。

・・・980円。

安すぎるだろう。
でも安いのはありがたい。

寒さが厳しくなってきた折、
ちょうど中がフカフカッとして
私のナイーブな爪先をホカホカッと守ってくれる
防寒ブーツがほしいと思っていたところである。

ちゃんとしたものを買おう、と思っているのだから靴屋に行けばよいものを
貧乏人のサガでやっぱりまずはホームセンターをのぞいてしまう。
そして、そんな私たちの要望にいつもきっちりお応えしてくれる
我らがホームセンターはやっぱり期待どおり、
980円なんぞと魅力的な価格の魅力的な防寒ブーツを用意していてくれる。
それが苦悩の始まり。

これ、本当にちゃんとあったかいのかしら。
どうせ野良履きになるのだからデザインは二の次で
けれど安いがために役に立たないのでは困る。
価格に見合わないほどさんざん迷って結局、お買い上げ。

今日からヨロシクネ、と980円のブーツ様に挨拶してから足を通し、
恐るおそる野良へ出かける。
いつもは30分で凍りつく冷え性の私の爪先は
その日一日温かかった。

980円、バンザイ。

これからの季節も野良に出るのが楽しくなります。
ありがとう。

  


Posted by たびんちゅ at 15:04Comments(0)